愛知県名古屋市緑区にあるラブホテル「FUTARINO HOTEL」を取材させていただいた。
ここには、一般開放されていない昔ながらのラブホテルの雰囲気を楽しめるフロアがある。そのレポートと、今回の大改修、今後の展望など、多岐にわたってお話を伺った。
今回の記事は全4ページ。
FUTARINO HOTELに伺うことになったきっかけ、FUTARINO HOTELの歴史、レトロフロアの客室レポート、令和フロアの客室レポート、そしてFUTARINO HOTELのこれからについての5項で構成している。
時代を行き来するラブホ?
FUTARINO HOTELに興味を持ったのは、福岡市のラブホテル「オドホテル」のツイートがきっかけだった。
「昭和と令和の時代を行き来出来るラブホが名古屋にございます」
オドホテルTwitter
FUTARINO HOTELは、元々「ホテルピアノ」として長らく営業していたラブホテルだ。2020年に大幅にリニューアルされたことは知っていたが、そんなことになっているとは知らなかった。
公式サイトを拝見すると、確かに
こちらのお部屋が一般開放していない昭和ラブホなお部屋です。撮影スタジオとしてのみご利用いただけます。ご利用をご希望の場合はお気軽にお問い合わせください。
と書かれてある。
これはなんともおもしろそうだ。行き来できると言われれば、何がなんでも見てみたい。早速問い合わせをし、現地に伺うことに。
FUTARINO HOTELの歴史と改装
FUTARINO HOTELの歴史
まずは専務からお聞きした、FUTARINO HOTELの歴史について触れておきたい。
FUTARINO HOTELの建物自体は42年ほど前に建てられたという。
現会社が取得する前のことなので、正確にはわからないが、建ててからわずか3年ほどで調子が悪くなってしまい、すぐに手入れをすることになったようだ。

今から約25年前に現会社がこのホテルを取得し、大きな改修をすることはなく、そのまま営業を続けてきた。
しかし、経年劣化により、配管などホテルとしての基礎の部分がどんどんダメになっていき、建物や基礎の不具合が増えていく。
いよいよ、ホテルをつぶすか、どうするか……という選択を迫られるような状況となる。
そんなとき、「こんなおもしろい造りのホテルは珍しいし、もう建てられないんだから、つぶすのはもったいない」と他のホテル経営者や設計士からの後押しもあり、昨年、大改装に踏み切った。

あえてワンフロアの改装を見送った
「せっかくだったら、おもいっきりやるか!」と意気込んだものの、全館改装とすると予算オーバー。しかし、予算に合わせれば、中途半端な改装になってしまう。
それならば……と、改装するフロアを限定しておもいっきり改装をすることにしたそうだ。
そのため、1階・3階・5階の全3フロアのうち、1階・3階だけに注力して、基礎的な設備も含めた改修・改装を実施した。
そして、改装に至らなかった5階については「改装をして、綺麗になったことを期待してご来館されるお客様が、変化がない古い客室を見たら、きっと混乱されますよね。だったら、5階客室の営業をやめて、改装したフロアのみ営業することにしました。こういう経緯もあって、5階についてはエアコンや配管設備の工事は見送りました」と専務。
とは言え、いずれ資金的な目処が立てば、未着手のフロアも改装を検討する。その段階になったとき、スムーズに改装工事をできるような工事をされたそうだ。
ただ、改装のコンセプトについてはまだ考え中で、今回改装した客室が人気であれば、それを踏襲したデザインにする可能性が高いとのこと。

思い入れがあるから、この状態も良い
営業できる客室が減るということは、単純に売上が減るということだ。一見すると、困った状況のようにも感じられるが、専務はこう語る。
「本当は、全部改装して、全室改装しました!と大きく宣伝できれば格好良かったんですけど。でも……自分は若い時からずっとここで働いているから、この古い客室に思い入れもあるんです。だから、これはこれでいいかなと思っています」
そんな思いから、令和の新しいデザインの客室と、昔ながらの雰囲気を感じられる客室の両方があることは、このFUTARINO HOTELの魅力のひとつであると感じたそうだ。
「同じように面白がってくださるお客様もいるんじゃないかと思って。だから、ポートレートなどの撮影で使っていただけるようにサイトに案内を書いたんです」
5階にある未改装の客室は、ラブホテルの客室としては使用できない。でも、1階・3階の客室を利用してメイクや着替えをし、5階の部屋で撮影する……といったことは対応可能だそう。
「このフロアを眠らせておくのはもったいないから、とりあえずはじめてみたお試し企画なので、まだまだ自分たちも不明瞭なところもあります。ですから、各種SNSのDMを使って、事前に利用者と“応相談”という形をとらせていただいています」とのことだ。

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