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【京都府久御山町・ホテルブリッヂ】老舗ラブホテルにインタビュー(前編)

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「久御山町」という町をご存じでしょうか。

京都府の南部に位置していて、伏見区や宇治市に隣接している、田んぼが多いのどかな町。

わたしは長らく京都に住んでいるのですが、「久御山と言えばイオンモールとコカコーラの工場があるところでしょ?」という印象があります。

久御山を代表する商業施設・イオンモール久御山のすぐ近くに、2軒のラブホテルがあります。その内の1軒が、今回お話を聞かせてくださった「ホテルブリッヂ」です。

いかにも“老舗”感のある、古き良きモーテルといった風貌のホテルブリッジ。オーナー(以下、オーナー)と、その息子さん(以下、子)に、ブリッヂの歴史や久御山町のラブホテル、運営についてお聞きしました。

前編は、ホテルブリッヂができるまでと、運営についてのお話を。そして、後編はラブホテルで営まれる生活にフォーカスしたお話を書いています。ぜひ最後までお付き合いください!

目次

1970年ごろ、ホテルブリッヂができた……っぽい

「ホテルが売りに出てるから買わへんか」

あまみ

「ホテルブリッヂ」を始めたきっかけを教えてください。

オーナー:うちの父親が、何でも新しいことをやりたがるんです。知ってる人が「これやってる」と聞けば、それをやりたい。「パン屋さんやってる」と聞けば、やりたい。そんな父親と親しい不動産屋さんがいはって、いろいろな物件を持ってくるんですよ。

「こんなパン屋さんどうや」とか「こんなお風呂屋さんあるけどどうや」とか。

うちは子供5人おったから、誰かに何かをやらせたいんやね。父親が金出して、お風呂もやり、パン屋さんも、いろいろやるねんけどそんなうまいこといかへんね。僕も親父を手伝って、西宮でお風呂屋さんを数年やりました。ところが、西宮市の計画道路に引っかかって、道路に買収されました。

でもその間に、うちの父親に「ホテルが売りに出てるから買わへんか」と話が来て。そのときはね、昭和47年(1972年)ぐらいですかね。

ホテルブリッヂを購入、建て直し

オーナー:ホテルブリッヂは、この前の大阪万博(1970年)目当てに建てたホテルで、7棟で10室のバンガロー式でした。大阪で旅館やってる人が、万博終わってから売りに出して。遠いからね、管理人にまかせてやったら大変やから。

ほんで、父親は、このホテルを買った。僕が数年やって、建て直そうということになって。

でももう、そのときはもうこの辺一帯は工業専用地域に入れられてました。ホテル・風俗は建てられへん、住宅も商業用地も建たへん、ガレージか工場しか建てられない。

ただし、工業専用地域に入っても、それを一回は建て直すことができるんですよ。全部潰したらあかんけど、ある程度重要なところだけ残して、120%まで建てられるんです。その法律を利用して、120%大きめの建て直しをした。

それは昭和58年(1983年)に竣工しました。それから40年。前のオーナーも入れたら、もうちょっと増える。45年か6年になるんちゃうかなあ。ぼくが40代なるか前くらいやったわ。正確な年数はわからへんのやけどね。

久御山町のラブホテル

あまみ

昭和47年の平凡パンチに、ブリッヂが載ってるんです。名神、南インターと久御山周辺のラブホテルが掲載されています。ブリッヂの向かい側には「しあわせ」っていうのがあったと書いています。

オーナー:南インターは結構数があって、そこから固まってあるのはここだけですね。この辺7軒ありました。

「しあわせ」は、今の「ホテルペイデイ」ですね。僕がここをはじめたときは、15室ぐらいで木造やった。現在のオーナーになって、建て直して、うちとおんなじくらいの歴史やと思います。

ホテルブリッヂ向かいのホテルペイデイ

この前の道を「しあわせ街道」というんですよ。僕がここをはじめたときに、「あれはしあわせ街道いうんやで」って言ったらそれがいっぺんにザーッと広がって(笑)

あまみ

しあわせ街道、良いネーミングですね! あと、ブリッヂのお隣に「タイムマシン小倉」っていうのがあったと書いてあります。

オーナー:はい、「モナリザ」やったかな(※2007年ごろまでは「ジルバ」)

ホテルのあとは岩盤浴をしはった。全部屋岩盤浴にしはったけど、最終的に土地を売り出しはった。

今、タマホームのところ、あそこは「ウィンブルドン」いうホテルでした。結構大きかったんですよ。3階4階建ての、ごっついのんありまして。それがすぐに閉めた。

それからもうちょっと行ったとこに「木津」、「セブン」というのもありました。

ブリッヂから、ちょっと大阪寄りに行ったところに松屋の牛丼ありますよね。その後ろに「むらさき」というホテルもありました。その7軒が固まってました。

名神超えたらここが一番のグループでしたよ。だんだんとみんな消えていって、うちとペイデイさんだけが残ってます。

国道1号に沿うように、たくさんのモーテルが並んでいた1

※屋号や時期、場所について、現時点では未検証です。ご了承ください。

ブリッヂの利用者はどんな人たち?

あまみ

基本的には久御山周辺のお客さんが多いですか?

オーナー:車社会の”はしり”のときは、近隣の伏見や宇治、城陽とか、あちこちのお客さんがいました。

高速が通ってからは、近畿地方全般から来られるようになったね。最近ネットの販促に注力しはじめて、ありがたいことに東京や九州、東北地方からのお客さん……、結構多方面から来ていただいています。

車で旅行される時の休憩や宿泊で利用される方も多いんですよ。1人なんぼの料金じゃないし、チェックインの時間も気にせんでもええからね。

あと、毎年太陽が丘で夏にやっている音楽イベント、フェスいいますの? 京都大作戦っていうんですか。あの時もいろんなところから来られますね。

ブリッヂの運営について

設備維持は難しい!

あまみ

コロナ禍はやはり大変でしたか?

オーナー:コロナ禍が始まったときに、(売上が)1日1万円落ちまして。月にしたら30万ですわ。どうしようかなと思った。

でも、銀行さんに融資をお願いして、お部屋の壁紙や絨毯を替えたり、エアコンやら、あかんもの全部入れ替えた。ボイラーも傷んでるとこ修理したり。

次はお風呂やネオンを直していきたいなーと考えてますわ。でも、この15号室の壁紙はそのまま。張り替えようかとも思ったけど、これニューヨークのツインタワーやし置いといた。歴史やから。

ラブホテルに限らず、宿泊施設は設備投資にお金がかかりますな。

15号室のツインタワーのクロス。歴史を感じる。

物価の上昇が厳しい……!

オーナー:あとは昔と違って物価が上がってますでしょう。

光熱費や燃料費など、4~5年前と比べると2~3倍になってますわ。

あまみ

めちゃめちゃ上がってますよね。宿泊施設といえば、ボイラーの管理の大変さもよく聞きます

オーナー:日に2回は必ずボイラー室のぞきに行って、調子よく動いてるか、油はどんだけ減ってるか点検して……、油切れたらもう商売できへんからね。

油かて、1回500リットル注文するねんけど、コロナ禍の前は3万円台ですよ。今、5万5000円です。1週間に1回来ますねん。そしたら月4回の20万、20万で止まらへんね、おおかた30万近い金が油で消えていくからね。

そうか言うて、安モンの油使ったら、釜が早く傷みますねん。硫黄をようけ(=たくさん)含んでる油は、アウトですね。やっぱりA重油で、A重油の中でも上質のやつを使わへんだら……普通のトラックやったら、それ入れたら走るっていうぐらいのええやつ使わへんだら、釜が長持ちしません。もう、すぐに穴があきますねん。

だいぶ昔に穴があいて入れ替えたけど、それから20年以上は経っているんかな。業者に「なんでこんなに長持ちすんねん」って聞いたら、”ええ重油”使ってるからちゃうか、て(笑)

あとは、リネンも3年の間に2回値上がりしました。今まで21~23万円で終わってたやつが、26万の請求が来た。ガスで乾燥さしてるから、すごいガス代がかかるって言ってましたわ。

アメニティもボンボン(価格が)上がってます。何もかも上がってます。お客さんからいただく料金を急激に上げる訳にはいかへんから、大変なんですよ。

あまみ

両替も手数料が高くなりましたよね

オーナー:高いで、僕も両替行くけども、今値段上がってるわ。1万円を5000円に換えるのでも、5枚まで無料、5万円になったら、もう手数料がかかるし。

2015年撮影。当時はネオンが灯っていた

料金の値上げは苦渋の決断

あまみ

ブリッヂは現金精算ですし、両替の手数料は大変ですよね。

最近は苦渋の決断で値上げするホテルさんも増えました。

オーナー:うちはそんなに値段を上げてなかってん。週に1回とか、3日に1回来るお客さんもいらっしゃるし。

それから割引券(宿泊)も出してますよ、500円の。

あまみ

値上げしよう、みたいなのはないんですか?

オーナー:そうやね~、お客さんの満足度も上げていきつつ、考えていかないといけない部分やからね。

子:でも、これからちょっとだけ。さすがにいろんなコストが上がってるんで、ちょっとだけ……数百円は上げさせてもらおう、と。

オーナー:何でもかんでも上がってますなぁ。とはいえ、安さを求めて毎週来られるお客さんからすると、世知辛いところもあるし、こちらも知恵絞りながらですわ。

インタビューは後編へ続きます!

ホテルブリッヂのインタビューは後編へ続きます。来週、12月26日夜に公開予定です。

ホテルブリッヂのガレージ

ホテルブリッヂ 詳細

京都府久世郡久御山町野村村東410

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昭和ラブホ・平成ラブホ探訪家の「逢根あまみ(あいねあまみ)」が、マジメに、思いのままに、ラブホテルにまつわるあれこれを書き連ねる、“チラ裏的”ニュースレターです。
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この記事を書いた人

昭和の趣の残るラブホテル=昭和遺産ラブホテルの記録・レポートをするユニット「終末トラベラー」主宰。昭和遺産ラブホテル、終末観光地の記録をしています。昭和遺産ラブホテル同人誌「あまみのラブホ探訪」の発行、トークイベントなどもしています。

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