クルーズ客船のキャビン風客室で、ラブホテルの「小さな歴史」に触れる【大阪】

大阪府内、郊外。
幹線道路や大きなショッピングモール、住宅街が近くにあり、休日には大変にぎやかになる地域。ここに、数軒のラブホテルが点在している。

「ちょっと休憩しよか」なんて言葉を、さらりと言ってしまえるし、不快感なくそれを自然に受け止めることができてしまう空気感が、ここにはある。

今まで避けていたラブホテルへ

数年前、こういう活動を初めて間がなかった頃。ネットで少しだけ内装写真を見たことがあったこのラブホテルは、知ってからすぐに改装されてしまった。

当時の私は、とにかく見た目にも派手で、往年の面影が分かりやすく残っているラブホテルが好きだった。それ故に、改装やリニューアルという文字を毛嫌いしていて、その文字をwebサイトや看板で見ようものなら、この世の終わりのように大騒ぎしていた。

このラブホテルに対しても、そういった具合に「改装だって!ダメだ!もうこの部屋は見れないんだ!終わった!」と大騒ぎした。改装が終わって念のために見たwebサイトには、煌びやかな写真が並び「やっぱりな!」と悪態をついてブラウザを閉じた。

しかしそれから数年が経ち、残り香に対して“鼻が利く”ようになり、どんな些細なことでも楽しむ方法を身につけた。ここも、そんな段階で訪れたのだった。

あの時みたwebサイトには煌びやかな写真が並んでいたけれど、じっくりと観察すると、一見現代風な内装写真ではあるがところどころに嬉しい違和感を感じる。いくつか目星をつけて、その中の一室に入ってみた。

いざ、入室

共用部分は少し経年劣化を感じさせるものの、ラブホテルらしい、大人のムードが漂っている。ドアの上に掲げられたルームナンバーのフォントは、代表的な昭和遺産ラブホテルでもよく見かけるものだ。やっぱりここには、なにかある。

玄関

玄関はごくごく一般的な広さが確保されていると思う。旅行かばんなど、大きめの荷物を持っていてもスルリと入室できるくらいの広さはある。
出前口はこの玄関に確保されており、自動精算機もここに設置されている。

水まわり

前述のとおり、数年前に改装が入っているため、非常に綺麗な状態だ。洗面所、トイレ、バスルームが一箇所に配されていて使い勝手も良い。

洗面台

鏡が大きく、余裕のあるスペースで身支度がしやすい洗面台。アメニティや備品などもきれいに並べられていて、どこに何があるのかも把握しやすい。

トイレ

トイレ内はパステルイエローのタイルで統一されていて、さわやかで可愛らしい印象。手入れはされていて気持ちの良い使い心地だし、ウォシュレットも比較的最近のものなので安心。
ナプキンはふつう用と、パンティライナーの両方があるため、いざという時に心強い。

バスルーム

洗い場、バスタブ共に広々としていて、二人一緒に入っても使い勝手は良さそうだ。スケベイスも設置されている。床タイル、壁タイルもカラリとしていて使用感もさわやか。バスタブ側の壁の小さなタイルは改装前からあったのでは……?と思える、趣のあるものだ。根拠はないんだけど、なんとなく。

濃淡のあるブルーのタイルが並ぶさまは、夜の海を見ているよう。

アメニティ

男性向け(パウチでの提供)

  • 洗顔
  • シェーブジェル
  • ジェル水
  • ワックス

女性向け(ボトルでの提供)

  • リキッドクレンジング
  • クレンジングウォッシュ
  • モイスチャーローション
  • デイリーシールドミルク(SPF20 / PA++)
  • フォームソープ
  • ヘアエッセンスウォーター
  • ボディミルク

その他

  • 歯ブラシ(4本)
  • カミソリ
  • ヘアバンド
  • ヘアクリップ
  • コットンセット(2つ)
  • ヘアブラシ
  • マウスウォッシュ(2つ)
  • コンタクトレンズ保存液
  • デリケートゾーンソープ(パウチ・1つ)
  • 入浴剤(3種)
  • 泡立てネット

    ドライヤーの他に、カールドライヤーとアイロンの設置もあり。

メインルーム

メインルームは白とブルーが基調となっていて、とてもさわやか。右手奥のドアが玄関、テレビの手前にもう一つドアがあり、そこが水まわりへのドアとなっている。

さて、ベッドはというと……。

この階段の奥に設置されている。クルーズ客船のキャビンのようなデザインだ。バスルームのタイルや、白とブルーを基調としていることに合点がいく。
天井中央部分は鏡になっていて、ベッドで横たわる自分たちの姿が見えるようになっている。

白というよりはアイボリーに近い色合いのベッドは一見シンプルだが、要所要所にゴールドの金具が使用されていて、なんとなく往年の雰囲気を感じとることができる。

その証拠に、このベッドにはとんでもないものが付いていた。それが「日産ベッド工芸」のプレートだ。

昭和の趣の残るラブホテルに設置されているベッドでよく知られているのは、ほかでもない「ビケンズベッド(以下ビケン)」のものだろう。

ビケンは回転ベッドが代表的な作品で、現存しているものも散見され、自社の名前が書いてある特徴的な操作盤がポイントだ。また、シンプルなベッドであっても、自社の製品であることを示すプレートを確認できるケースが多々あるため、知名度も高いと思う。そのようなことから、昭和のラブホテルを代表するベッドメーカー=ビケンであることは間違いない。

ただ、当時は「モールドベッド産業」「大阪通商」など特殊ベッドを製作しているメーカーはたくさんあって、その一つが「日産ベッド工芸」であった。

これらのメーカーに共通することは「(ベッドの)見た目がわりと似ている」ことで、ビケンだと思ったら日産ベッドだったり、日産ベッドだと思ったら大阪通商だったりと、姿形だけでメーカーを判断するのは難しい。

なぜそのようなことがあるかというと、特殊ベッドが全盛期のころには、流行ったベッドを各社が次々に真似をして製作するということが往々にしてあったようだ。「あまみのラブホ探訪vol.2」でのビケン取材時には、「他社がウチのベッドを真似て作ったりとか」という話もお聞きしていた。

……と、余談がすぎてしまったが、日産ベッド工芸も回転ベッドやメリーゴーランドを製作しており、これらの操作盤では「日産ベッド工芸」製であることが確認できているが、いわゆる“ふつうのベッド”で日産ベッド工芸のプレートを今まで一度も見たことがなかった。 広い日本のどこかには存在するのかもしれないが、私は今回初めてこれを見ることができて、心底感激した。

当サイトのこちらの記事のメリーゴーランドは日産ベッド工芸製です。

そして感激と同時に、やはり見た目だけで判断するのは良くないなぁと痛感した。内装写真しかり、ベッドのメーカーしかり……ラブホ探訪は奥が深いことを改めて感じたのだった。

まとめ

改装され、綺麗で快適な空間でありながら、昭和の趣がひっそりと残るラブホテル。歴史を感じられるベッドに思いを馳せるのも一興だ。

休憩・宿泊におすすめ
参考価格:休憩 5,790円(週末昼間3時間半ほどの利用) 
※利用料金、設備は2020年訪問当時のものです。料金は、利用日・時間帯によって変わります。この記事の限りではありませんのでご注意ください。

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