年末のコミケ参加を終えて、東京に一泊したあと、ボチボチと関西に戻っていた。ふと「そうだ、熱海に行こう」と思い立ち、カーナビに熱海を入れてみる。
熱海といえば、昭和遺産ラブホテルとして名高い「ホテルファンタジア」は外せない。ファンタジアは電話予約が可能なので、「在室中で入室できない」という悲しいことが起こらない。遠方のラブホ探訪にはありがたすぎるシステムだ。
16号室を予約
到着する少し前に電話をして空き状況の確認と休憩予約をしておいた。希望だった106号室・宇宙の恋が空いているとのことで、迷わずその部屋を予約。
道路沿いに看板があるので、ファンタジアには迷うことなく到着した。国道から脇道に入ると、凸凹のパラペットが目に入る。この凸凹パラペットも、昭和遺産ラブホテルでよく見られるものだ。そして、熱海のもつパブリックイメージに添う、真っ白な建物が眩しい。入室する前からワクワクする。
「ようこそロマンの城へ」と書かれた看板を横目に、ファンタジアの敷地の中へ。
いざ、入室
ファンタジアはモーテル型なので、希望の客室のガレージに車を停め、入室する。今回は事前に予約していたので、16号室に難なく車を停めて客室へ。
玄関は広めで、大荷物での入室もスムーズだ。ファンタジアは前金制で、入室後間も無く集金に来られた。玄関入ってすぐの小窓で料金を支払うシステムだった。
客室は2階部分にあるので、階段であがっていく。
水まわり
階段をあがってすぐのところには水まわりがある。トイレ、洗面台、バスルーム、サウナボックスが並ぶ。
トイレ
コンパクトではあるが、綺麗に掃除をされている。クロス(壁紙)は、惑星やスペースシャトルなど、宇宙モチーフのイラストがちりばめられたもの。似たようなクロスは何度か見たことがある。宇宙がテーマの客室にはマストなアイテムなのかも。
トイレに設置されていた換気扇は1984年製だった。私よりも一年先輩だ。
洗面台
トイレの向かいには洗面台が設置されている。昔、一般家庭にもあったような洗面台で、こちらもコンパクトだがアメニティが整然と並んでいる。アメニティの内容は後述。クロスはオーロラカラーで幻想的な印象だ。
バスルーム
真っ赤なタイルが鮮やかなバスルーム。シャワー、バスタブともに2ハンドル混合水栓なので、サーモスタット式に慣れていると少し使いにくく感じるかもしれないが、使用にはなんら問題ない。
特筆すべきは「サラダボウルバス」が設置されていること。サラダボウルのような丸いバスタブが可愛い。こちらのものは透明ではなく、マーブルっぽい色合いのものだ。少しパールっぽいような気もする。
以前にも書いたと思うが、サラダボウルバスは非常にすべりやすい。使用時、足元には特に注意した方が良いだろう。
個人的に「おっ」と思ったのは、スポンジがハート型だったこと。バスルームのスポンジといえば、白くて直方体のシンプルなものが多いが、ここのものはピンクのハート型だ。思えば、敷地に入ったところからやたらとハートの形を目にしていた。建物、駐車場、洗面台に貼られたシール、そしてバスルーム。これはまだまだありそうだ。
アメニティ
男性向
パウチ
- 洗顔料
- ワックス
- ヘアトニック
- 美容液
ボトル
- ヘアトニック
- ヘアリキッド
- シェーブローション
女性向
- クレンジング
- 洗顔料
- 化粧水
- 美容液
※いずれもパウチのもの
その他
- 歯ブラシ(2本)
- カミソリ
- コットンセット
- ヘアブラシ
- マウスウォッシュ(2こ)
- 紙コップ
- シャワーキャップ
他にボトルのハンドソープの設置あり
サウナ
箱型のサウナルームが設置されていて、これは日本サウナ製。上部にスイッチ部が乗っていて、味があって素晴らしい。こういったサウナも見かけることが少ないので、しっかりと鑑賞しておきたいものだ。
メインルーム
メインルームは水まわりをこえて一番奥に位置している。こちらも宇宙をイメージしたカーペットやクロスが使用されている。特に壁に大きく描かれたスペースシャトルは目を見張る。
メインルームのつくりや設備自体は非常にシンプルで、ベッドをはじめ、テレビ・クローゼット・冷蔵庫・テーブル・ソファなど。
ベッドはUFO型
ラブホテルの客室の「顔」とも言えるベッド。ファンタジア106号室のベッドはUFO型だ。赤を基調に、ヘッドボードには青やグレーを使用していて、カラフルなランプで飾り付されている。この時、ランプは残念ながら点灯しなかったけれど、点灯したらどんな姿だったのだろうか、と想像を膨らますのも楽しい。
よく見ると、ヘッドボードの青い部分はラメ感があり、UFOモチーフにはぴったりの素材だ。ヘッドボードにはティッシュも設置されているのだが、懐かしいレースのカバーがかかっていてとても良い。実家アイテムっぽさもある。
また、足元の“搭乗口”にあたる部分にはハートのシールが並べて貼られていて、なんともニクい演出である。
このUFOベッドは言わずもがな円形ベッドなので、円形のマットレスが使用されているのだが、布団は一般的な長方形のものだ。過去にも長方形の布団が使用されているラブホテルを見たことがある。これもまた、時の流れを感じるポイントで、自分には心地よさすら感じられる。
天井も見逃せない
この部屋は天井も見逃せない。ベッドの上は折り上げ天井になっており、鏡が貼られている。可愛らしい部屋の中にもやはりエロスは存在しているのだ。
そして、小ぶりながらもデザイン性の高い照明や、豪華な廻り縁など、じっくりと見たいポイントが多すぎる。
VRラブホ
全天球で撮影したファンタジア16号室も楽しいので、ぜひぐるぐると見たいところへ回してみてほしい。
ファンタジア16号室 宇宙の恋 – Spherical Image – RICOH THETA
備品も鑑賞しよう
タオルやサイン、インフォメーションもぜひ鑑賞して欲しい。文字デザインが好きな人にはグッと来るものが一つや二つではない。ファンタジアのママが書かれたインフォメーションも、可愛らしさが感じられてホッとする。
書き出すとキリがないので、ぜひ、現地を訪れてゆっくりとお気に入りの鑑賞ポイントを探してみてほしい。
最後に、ファンタジアで、とても印象に残っていることを書き残しておきたい。
予約の電話にて
コミケ終わりでぐったりと疲れていることもあって、あちこち見て回るのは体力的に心配もあったため、予約できるファンタジアに行くことに決めた。すぐにファンタジアに電話をして、空き状況の確認と、休憩での予約をお願いすることに。
「もしもし、ホテルファンタジアです」
電話口に出たのは、語り口の柔らかい、ゆっくりお話になる女性だった。どうやら年配の方のようだ。慣れた感じで丁寧にシステムや部屋の特徴を話してくれ、私からは休憩であることや、希望の部屋番号、だいたいの到着時間などを伝えた。
「お名前と電話番号を教えてくださる?」と聞かれて、少し驚いた。ラブホテルというものは元来プライバシーと秘匿性を重要視していることが多い。稀にある予約ができるラブホテルですら、名前を聞く程度(これはこれでドタキャンとかありそうで心配なのだが)なので電話番号も聞くのは意外に思えた。ドタキャンが多いのかなぁ、とか、予約時間に遅れる人が多いのかなぁ、なんてことを考えながら自分の名前と電話番号を女性に伝えた。
伝えたことをメモしているのか、女性は少し黙ったあとに名前と電話番号をゆっくりと復唱して、こう言った。
「ごめんなさいね、遅くなると心配しちゃうから」
驚いたことを見透かされたのか、それとも業界の“暗黙の了解”から離れたことをしていることの弁明なのか。いずれにしても、私がよく知るラブホテルとはちょっと違った。この言葉には、本当に心配する気持ちももちろんあるだろうけど、時間を過ぎてしまったら心配して電話してしまうよ、という念押しもあるのだろうと思う。ラブホテルからお客さんに電話をすることは、いかなる場合でも滅多にないから。
そして続けて
「もうひとつお伝えしておきたいのだけど、幸せになっちゃうと、ピアスとか忘れ物しちゃう人がいるんです。そういう時は今聞いた番号に電話しちゃうから、すみませんね」と言った。
ラブホテルで“幸せになる”……なんて素敵な表現だろう。きっとこの女性は、たくさんの「幸せ」のあとをホテルファンタジアでみてきたのだ。そんな風に感じて、表現できる感覚がうらやましく思えた。「わかりました、では後ほど伺います」と返事をして、電話を切ってすぐにカバンからメモを引っ張り出し、この電話をメモ帳に一言一句そのまま書き残した。
2年も経った今でも、この日の電話のことを鮮明におぼえている。ホテルファンタジアでわたしが感じた「幸せ」とともに。
ホテルファンタジア
静岡県熱海市泉元門川248−2
0557-80-1651
(下4桁がイロコイなのも良い)
(昼間3時間ほどの利用、特別期間中なので通常料金に1人500円増)
利用料金、設備は2019年訪問当時のものです。料金は、利用日・時間によって変わります。この記事の限りではありませんのでご注意ください。
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