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浜松の昭和遺産ラブホ 五萬石・ユートピアの新運営「K’s GROUP」インタビュー

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2020年7月18日。

浜松、遠州灘沿いに並ぶラブホテルの中でも「昭和遺産ラブホテル」の名店と言えるホテル五萬石、ホテルユートピア、そして同系列のホテルエナの3店が「K’s GROUP(ケイズグループ)」の運営になったことが発表されました。

運営が変わって2ヶ月になる9月中旬、K’s GROUPの代表取締役社長・近藤政人さんにインタビューさせていただきました。K’s GROUPの歴史と、これからの五萬石・ユートピア・エナの浜松3店についてお聞きしました。

このサイトを見てくださっている方が気になるであろう、ホテルユートピアの特徴的な内装が今後どうなるのかについても伺っているので、ぜひ最後までお付き合いください。

目次

K’s GROUPの歴史

伊勢湾台風がきっかけ!?運送屋からホテル業の道へ

今日はよろしくお願いします。まず、K’s GROUPの歴史について伺いたいんですが、どういう経緯でホテル業をされることになったのでしょうか。

「今もそうですが、元々は運送屋です。伊勢湾台風によって木造の家が全壊したことで、セメント需要が高くなったことを受けてセメントを運んでたんですね。不眠不休で1ヶ月走りますとね、田んぼが一反買える時代だったんです。

そうして主要道路を走っているとホテルがあった。見ると、いつもシャッターが閉まっている。体もえらくなってくるし、こういう商売をせなあかんのじゃないかと。昭和54年、岡崎インターチェンジのところにラブホテルを作った。これが1店舗目のダンディというホテルです。この時私は小学校中学年くらいだったと思いますけど、父と母と二人三脚でやっていましたね。

その後高校卒業、サラリーマン勤務を経て平成3年に入社、1店舗目のダンディに入りました。その年には新築のホテルをオープンしたり、平成8年には豊田の方で新築ホテルを父と一緒にオープンさせていただいた」

K’s GROUP近藤さん

突然の父の事故死

とても順調にホテルを運営されていたのですね。

「そうですね、非常に時代もよく、いろんな企画もお客様に受け入れられて、調子良くやらせていただきました。ところが、平成10年に父親が交通事故で突然亡くなったんですよ。

売り上げはちゃんと確保してるんですけど借金が約30億ありました。でも、銀行さんから『あなたも父親亡くなったで、資産処分して返しなさい』と言われなければやっていける自信はありました。おかげさまで言われませんでしたもんで、今があると。

ただ、初代でやってこられて、大きな柱、大黒柱がなくなるのは厳しかったですね。スタッフも当時80人くらいおり、みなさんの戸惑いや不安も伝わってきました。早急に私の母親を社長に取り決めまして、とにかく一生懸命やってくよということで方向性だけ定めました」

父の目標を受け継いで目指す200ルーム

当時29才の近藤さんは、志半ばで死去された父の目標を胸に、K’s GROUPを大きく成長させていきます。

「父親は生前、グループとして客室数110ルームを運営していて「200ルーム俺は絶対やるんだ」と目標を掲げていました。だから、父親の目標である200ルームを10年以内にやるぞということを母親と決めたんですね。平成20年まで、だいたい2年に1回ずつ買ってくぞ……と腹を括りました。

まずは平成12年に1店舗小さいホテルがあったもんですから、それを買いました。フルリニューアルしたんですけど、オープンの日が泣けてきましたね、お客さんがずらーっと並んでるんですよ。15部屋の小さいホテルですので、15台しか入れないわけですけど。涙が出ました。

私自身のメンツというか、父親が亡くなってもやるんだぞっていう思いを抱えていたんですけど、なかなか融資がつかなかったんです。でも、ある銀行さんが「よしわかった、おまえに託すよ」ってことで融資してくれたんですよね。本当に寝ずに働いて、なんでもやりましておかげさんで売り上げも調子良くやらせていただきました。

そして平成14年には、岡崎インターチェンジのところに新築で作りました。

岡崎インターチェンジにはすでに2店舗あって、そのすぐ裏に父親が土地を買ってましてね。インターサイドで客室90ルームっていうのは日本全国見てもないんですね。それを作るんだっていうことを父親は夢見てたんで「なんとしてでも作らないかん」と、母親は熱き思いを持ってましたんで、実現させました」

親友の死

客室数200ルームを目指して、着々と購入・新築を進めていきます。当初の目標どおり2年ごとにそれを達成していく中で、またしても不幸が襲いかかります。

「平成16年、新たに「ホテルを買ってくれんか」って話がでたんですが、私の仲の良い幼なじみが突然亡くなったんですよ。突然死だったんですけど、やる気が起こらんくなったんですね。「2年ごとに目標に向かって進めていく」と、ある程度自分の中で目標を定めてたんですけど、今回の話はすみません……ってことでやめたんです。

そしたらまたその年の年末に、どうでしょうかねえって話がありまして。私も友人がなくなったのを理由に立ち止まっててもいかんなぁて思ったんで、「わかりました、じゃあ年明けからすぐ進めてまいりましょう」ということで、それを平成17年の3月にオープンさせていただきました」

ついに目標達成!しかしリーマンショックの影響も

父の死、親友の死の悲しみを抱えながらも目標に近づいていく近藤さん。平成19年についに父の目標である「200ルーム」を達成しますが……。

「愛知県の近隣、特に西三河って言われるエリアは、売りに出たらすぐに買っていくというスタンスでおりました。とにかく他のものをいれさせないっていう。平成17年のホテル購入に続いて平成19年にまた1店舗買いまして、それで205ルームになり、目標達成したんですね。

翌年平成20年に改装したんですけど、リーマンショックがありました。それからはもう本当に売上が、ガーっと下がった。上がらないと言うよりも、下がっていきましたんでね。ただ、借金もだんだん減り、金利も下がってきてお客さんもある程度はついていただいてましたんで、資金繰りに困るということはなかったんですけど。でも平成20年から潮目が完全に変わったなぁっていう気がしております」

それは今も継続してるなっていう風に思われてますか?

「そうですね、交通事情の変化や、遊ぶアイテムの増加、恋愛やセックスに対しての意識の変化などはラブホテル業界にも影響があると思います」

運営において大事にしているもの

時代の流れも変わり、ラブホテルの運営は厳しい場面もあると話す近藤さん。ですが、長い年月で培われた経験とともに、大事にしている信念があると語ります。

お客さんのニーズには答えないといけないっていうのは今でも大事にしています。だから、言われたことを断らない。例えば、食事一つとっても、「しょうが焼きの玉ねぎが苦手なんで抜いてくれ」と言われたら、「はい、かしこまりました」なんですよね。絶対「それできません」なんてことはないんですよ。

私の入社最初のスローガンを「これラブホテルのサービスじゃねーだろ」っていうのにしたんです。平成元年に入社したときに、不倫さんだとかいろんな諸事情のお客さんがお見えになる中で、お食事を召し上がるお客さんも多かったチンしてそのままピラフを出すのと、チンしてからちょっとバターで炒めるのとでは雲泥の差があるわけですね。そういう一手間をやっていこうじゃないかっていうことで。

他にも、持ち込みの飲食があった場合に、しょう油貸してくださいっていうことがありますよね。この時に、しょう油だけ持ってったらこれは面白くないんですよね。やっぱりこれは割り箸と、取り皿2枚と、それとしょう油を持ってく。そうすると気が利いてますよね。寿司なのか、揚げ物なのか、どういうお食事を持ってこられたかはわかりませんけど、取り皿なんかあった方がなお親切ですよね。そういうところを大事にしてます。今でも」

浜松3店について

浜松3店を購入した経緯

この3店を買い取られるに至った経緯をお聞かせいただけますか?

「もともとは、うちに出入りしている協力業者さんからのご紹介でした。もちろん、この浜松3店にも出入りしておられる、共通の協力業者さん。売りたいって言ってみえるけどどう?っていうことで、「とりあえず見に行きますよ」とお邪魔させていただいた。

その時すでに前オーナーの元にはいっぱいお話はきていたようですが、全員口頭での対応だったと。「近藤さんのところだけ、ちゃんと書面で価格を出して話をしてくれた。私はその時点で決めさせていただいてたんだ」って言っていただきましたね。条件面でのいろいろな相談の末、収まった次第ですね」

ユートピア

浜松3店を購入した3つの理由

今回伺うにあたって、サイトやブログを拝見して、そして今お話伺った感じでも、愛知県で展開されている店舗と、浜松3店とでは毛色が違うと感じました。購入する決め手はなんだったのでしょうか。

その1 他県で挑戦してみたい

「他県に出たいっていうのがありました。私らが考えてる、常に取り組んでいるホテルのあり方とか考え方、提供の仕方が静岡県、浜松市民様にどれだけ受け入れていただけるかっていう挑戦をしてみたいという思いはありましたね」

その2 エリアに占める客室数の割合

「浜松3店のある、このエリアには客室が全部で199ルームあります。約200です。浜松3店はその中の51ルーム、約4分の1を占めます。すぐ近くに3店舗で100ルームというホテルがあるんですけど、そこが非常にお客様が入ってみえるんですね。ここでも挑戦してみたいという気持ちがありました」

その3 不思議な縁

「先ほども申し上げた通り、一番最初、昭和54年にダンディっていうホテルを作ったんですけど、その設計事務所と、五萬石の設計事務所が同じだったんですね。私、子供のころに父親から聞いた記憶があったんです。浜松に五萬石っていうホテルがあってな、城でって。ここでした(笑)大笑いでしたよ、ご縁ですね」

ユートピアってどうなるんですか?

昭和の趣の残るラブホテルを巡っているので、お察しいただいているかなと思うんですが……特にユートピア、回転ベッドとか置かれてるじゃないですか。正直なところ、改装やリニューアルはどこまでされるかというのは考えてますか。

「はい、考えてますよ。フルリニューアルを予定しています

それはもう、今風のというか、最終的には回転ベッドなどは退けてって感じで考えておられる?

「はい、もちろん」

それはだいたい、いつくらいまでにしたいなぁ、みたいなビジョンはありますか?

「2年後です」

その2年後というのは大事にされてるんですか?さっきも2年後ごとに目標を、とおっしゃってましたが。

「特に大事にはしてないですけど、タイミングですね。うちは10年スパンで「リニューアルをここでやる!」って決まってて。ここ浜松3店も、今年来年でどっか買うっていうのは決まってた中でのことですね。で、大体2年間くらいそのままの状態でやって、市場性をみて、これくらいかけたらこれくらいの売り上げだろうっていうのを見極めていくっていうのはあります。それでの2年ですね」

私のサイトを見てくれてはる方は、ここの運営が変わったということで、界隈が「わっ」となったんです。「回転ベッドどうなるんやろう」とかはすごく言われていました。私個人としては、業界が残ること自体が大事だという思いがありつつも、もちろん気になるところではあって……。

1部屋くらい残すのもありだろうかね。今チンチラだけど、あれを綺麗にして。いわゆる革張りにしたりとかして、もうちょっとかっこよくするのはありなのかもしれませんねぇ」

ぜひそれは!回転ベッド自体が貴重ですから、見たいっていう方は多いと思います。1部屋残してもらえると嬉しいかなって思います。
 
昭和の趣を残すユートピア54号室。
クラシックカー型の回転ベッドがあるのは日本でもここだけだろう

お客様と業界のことを考え続けたい

「私らラブホテル・レジャーホテル業界は「反社会勢力がやってんじゃないか」とか言われます。業界としてクリアにしていかなあかんとか言ってるものの、なかなかできないっていうのが実情で。

パチンコ屋さんはうまいことシフトされて、もちろん売上高も違うと思うんですけど色んな所に奉仕されたり寄付されたりとかっていうこともすごいなって思っていて。本当にラブホテル屋はレベルが低いと言うか……。

ラブホテル屋は夢ある商売で、やったぶんだけ、努力したぶんだけ必ずお客さんに響くっていうのはこの業界の良い所だと思ってます。何でもそうだと思いますけど、いろんなこと、こと細かい所に努力のしがいがあるっていうのがあります。お客様に感動していただけるように考え続けていきます」

最後に

実は、長らく五萬石、ユートピアを取材させていただいていました。
今回こうして近藤さんにお話をお聞きできたのは、他でもない前オーナーご家族さまのお気遣いあってのこと。

長く営業してきたホテルたちの記録を残して、そして自分たちはこれからも続くホテルたちを陰ながら応援したいから、運営が私たちでなくなっても引き続き見守って欲しい」と前オーナーご家族さまが私とK’s GROUPさんとを繋いでくださったのでした。

今回お聞きしたK’s GROUP近藤さんのお話はもちろん、前オーナーご家族さまからお聞きした五萬石・ユートピアたちの歴史を「あまみのラブホ探訪 4号」としてまとめるべく、鋭意執筆中です。完成した暁には、どうか手にとっていただけますと幸いです。

K’s GROUP詳細

愛知県を中心にレジャーホテルを展開しているHOTEL K’s GROUP(ケイズグループ )。露天風呂、プール、岩盤浴など充実した設備や今話題の最新設備をいち早く取り入れ、進化し続けるレジャーホテルグループ。2020年夏に静岡浜松に進出し、現在では全15店が盛業中。

[blogcard url=http://www.k-sgroup.com/html/]

[blogcard url=https://couples.jp/hotel-groups/hotelks]

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昭和ラブホ・平成ラブホ探訪家の「逢根あまみ(あいねあまみ)」が、マジメに、思いのままに、ラブホテルにまつわるあれこれを書き連ねる、“チラ裏的”ニュースレターです。
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この記事を書いた人

昭和の趣の残るラブホテル=昭和遺産ラブホテルの記録・レポートをするユニット「終末トラベラー」主宰。昭和遺産ラブホテル、終末観光地の記録をしています。昭和遺産ラブホテル同人誌「あまみのラブホ探訪」の発行、トークイベントなどもしています。

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